出逢い / ドイツの作り手・ベンジャミンさん(前編)
ただいま、実店舗にて開催中の
「“ひとつのテーブル”特集展 -やなぎとヘーゼル/ドイツ・ベルギーのかご-」にて
ドイツの作り手、ベンジャミンさんによるヘーゼルとやなぎのかご、
そして、ベルギーのジェニーさん・ジェフカさん作の、やなぎのかごを、それぞれご紹介・販売しています。
どちらも日本では、本特集展がはじめてのご紹介となります。
ぜひこの機会に、実際にみていただけましたら光栄です。よろしくお願いいたします。
さて、今回のコラムでは、ドイツのベンジャミンさんと
私たちの「出逢い」について振り返ってみたいと思います。
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ベンジャミンさんとはじめて会い、親交を深められたのは、
2023年8月にポーランドのポズナン市で行われた「世界かご編み大会」でした。
この大会前日に行われた前夜祭で、
私(店主)が、ベンジャミンさんとおなじテーブルについて
ゆっくりとお話をすることができたのが、きっかけでした。
ビールを傾けながら、楽しく、そして深い話ができたこと、
なぜか、はじめて会ったとは思えないような感覚になったことを
今でもよく覚えています。
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ほんとうに不思議なのですが、彼と、もう1人、ドイツの作り手の方と話している間、
まるでむかしから苦楽を共にしてきたような、旧友と久しぶりにあったような、
そんな感覚に包まれ、たしかな安心感がありました。
そのとき一緒に参加した、岩手でさわぐるみのかごを作られる佐々木さんとも
振り返ってお話したのですが、ベンジャミンさんたちとのミス・コミュニケーションは、
ほとんどなかったよね、というのが佐々木さんとの共通見解でした。
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ジョークを交えたユーモアのある会話もあれば、しっかりと真面目な話もできる方で、
こちらが言っていることをよくわかってくださり、私たちもお話をしっかり理解できて、
国や文化は違っても、「たしかなコミュニケーションが取れている感覚」を
お互いにつかむことができたと思っています。
まだ実演製作の大会がはじまる前でしたので、
その時にはベンジャミンさんがどんなかごを作られるかは、まったく知りませんでした。
前夜祭の会話では、こんなことを話していらっしゃいました。
「僕は、大会の2日間でかごが仕上がるかどうか、わからないんだよ。
(店主注:2日間でひとつのかごを作品として作り上げるのが課題)
もちろん、ベストを尽くすんだけど、すごく心配しているんだ。
僕の材料と作り方はとても時間がかかるから。
だから、大会が始まってから、見ているお客さんからたくさん質問されたりすると、
本当に困ってしまうんだよなあ。」
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その一夜が明けて、いざ大会がはじまると、
彼の表情からは昨晩よりも、ずっと真剣味を帯びていることが伝わってきました。
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かたわらには、彼が作ったかごが、数点サンプルとして置かれていました。会場の中でもとくに目を見張るような美しさを放っていました。 仕事の邪魔にならないよう、私たちがあまり話しかけないようにしていると、あちらからちょっとした自嘲的な冗談を言ってくれたりと気を遣ってくれる優しさがありました。
ポーランドの会場で、実際にベンジャミンさんがヘーゼルのひごを作っている様子を
つぎの動画でご覧ください。
会場の雰囲気もお伝えできるかとおもい、音声もそのままのこしています。
ほかの作り手さんのお子さんが、ベンジャミンさんのまわりでお話ししていたり、
動画の後半はウクライナから来ていた歌劇団による荘厳な合唱も遠くから響いています。
また、ベンジャミンさんの後方にいる作り手(やなぎを編んでいます)が、
もう、かごの底部分が完成しているのに対して、
ベンジャミンさんはまだ材料にするひごを削る作業を続けています。
こちらの動画のようにヘーゼルの木を、ひたすら削り続けている姿を見たときに、
前夜、彼が話していた「心配」の意味が、腑に落ちたのを覚えています。
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そして、そのとき同時に、ベンジャミンさんの所作や、道具、材料の扱い方を見ていて、
とても丁寧に、しっかりと作りこまれる方なのだと、確信を得ました。
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その2日間で最終的にできあがったかごは、そのかたち、バランス、持ったときのかっちりとした堅さ。
どの点をとっても、信頼できるかごであり、自信をもって日本のお客様へご紹介できるとおもいました。
その大会中、幸いにも、ベンジャミンさんとは何度もコミュニケーションを取る機会があり、
親交をすこしずつ深めていきました。
また、彼はいくつかのかごをドイツから持っていらしていたので、
その中の数点を購入させてもらいました。
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数日後、大会が終わり、片付けて去り行こうとするベンジャミンさんの後ろ姿に声をかけ、
思い切ってお願いをしてみました。
「日本のお客様に、あなたのかごをご紹介したい。」
彼は、すこし驚いたような表情のあと、こう言いました。
「OK。うれしいよ。日本にかごを送るのは初めてだよ。でも、きっとエキサイティングに違いないね。」
それから、1年半が過ぎ、
いま、皆さまにこうして、ご紹介できることをとても光栄におもいます。
ぜひ、店頭にて、実物をご覧いただければ幸いです。
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“ひとつのテーブル”特集展
-やなぎとヘーゼル/ドイツ・ベルギーのかご-
2025年1月
9日(木),10日(金),11日(土),12日(日),13日(月祝)
16日(木),17日(金),18日(土)
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弊店の実店舗は東京・南千住にある小さな家屋で、売り場面積は6坪ほど。
その真ん中にはお店を占めるように、大きめのテーブルが鎮座していますが、
このテーブルに「やなぎ」や「ヘーゼル」をつかって作られたバスケットを並べて、皆さまをお迎えします。
なお、特集は真ん中のテーブルにて。
そのほかの棚は常設の商品をおいておりますので、いつもどおりご覧いただけます。
再入荷の商品のほか、新しく届いているものもご紹介していきます。
こちらもどうぞお楽しみください。
ご来店をお待ちしております!