-しめかざり-- 新たな仲間、そして”モト”と”ウラ”
ただいま、オンラインショップおよび店頭では、しめかざりのご予約を受け付けております。
(受付締切:2023年10月16日(月)正午12時まで)
今回のコラムでは、今年(2023-2024)新たに仲間入りした
新作のしめかざりを中心にご紹介します。
*それぞれの商品名をクリックすると、各商品ページへ移行することができます。
海老のかたちに見立てられたしめかざり。
ひげが長く、腰の曲がった姿は長寿の象徴ともされています。
「南山之寿(なんざんのじゅ)」というのは、長寿を祝うことば。
中国の『詩経』の一説に由来し、
「南山」とは中国・長安(現:西安)の南方に位置する山のことで、
その悠久な姿から、当地では古来から堅固でこわれないもののたとえとされてきました。
「南山が欠けたり崩れたりしないように、いつまでも変わらず健やかでいる」という意があります。
こちらのしめかざりは左側にあるわらの束からはじまり、
三つの輪がひと息で、一筆書きのようにして形作られています。
まさに「(三つの輪=)三拍子が揃った」作りの、清々しいお飾りです。
三連のタッセルが下にむかって広がっており、
その末広がりの形には邪気を払い、運気をアップさせるという意味もあります。
4.萬亀-ばんき-
こちらは昨年よりひきつづきのご紹介ですが、
仕様がかわった新しい「萬亀」です。
以前は水引があしらわれていましたが、
今年は稲わらと稲穂、紙垂(しで/雷型の装飾)のみの
シンプルにすっきりとまとまった仕様となっています。
長寿や繁栄の象徴とされる亀。
その甲羅に「藻(緑藻類)」が付着した亀を「蓑亀(みのがめ)」といい、
昔から長寿のしるしとして、文様などでも描かれ親しまれてきました。
こちらは「笑う門には福来たる」、皆が笑ってすごせるようにと願いの込められた掛けかざり。
今年は少しだけ仕様が変わりました。
地元では、中央におかめの面が付いた笑門来福がよく見られるそうですが、
こちらは代わりに桟俵(さんだわら)をつけたオリジナル品です。
桟俵とは、俵(たわら)の両側につける円形のわら蓋(ふた)のことで、
こちらのしめかざりでは、それを太陽に見立てています。
玄関や門に飾ると、とても美しく華やかな印象になります。
今年はもうひとつ、来年(2024)の干支である「辰(たつ)」もご紹介しておりましたが、
たくさんのご注文をいただきましたため、限定数に達し、完売となりました。
そのほか、計27種類のしめかざりをご用意しておりますので、
ぜひお楽しみいただき、お選びいただけたら嬉しく思います。
今でも、いろいろな地域で作り継がれているしめかざり。
よく観察すると、多くのしめかざりに、稲わらの「モト」と「ウラ」、
ひとつのしめかざりの中にどちらもあるのがわかります。
もとは一本の「モト」と「ウラ」からなる稲わらが、人の手を介して、
さまざまな形として立ち上がり、そこに願いや意味が込められる。
日本ならではの、独特な文化であり、奥の深い世界であるなと思います。
また、神社に飾られている「ごぼうじめ」や「板じめ」のようなしめかざり。
たとえば柳の下の幽霊や、社寺に植えられたしだれ桜などの話があるように、
人は「揺れるもの」に異界を感じてきたそうです。
しめ縄から垂れている「紙垂」や「サゲ」が揺れたとき、
「そこを霊(神様)が通り過ぎた」と考えたのだとか。
こちらは髭籠(ひげかご/ひげこ)とよばれるかごで、
竹でかごを編み、編み残しの端をひげのように伸ばしたかごです。
ふるくから贈り物を入れるのに使われていたかごで、
今でもこの髭籠に果物や野菜を盛り、神社の例祭でお供えをすることがあります。
このような髭籠を作られる職人さんのお一人が、
「この先端の、髭の部分に神様が降りてくるんだ」とおっしゃっていました。
であれば、このしめかざりのピンと立った「ウラ(稲先)」の部分にも、
そういう意味があるのかしら。
そんなふうに、しめかざりの作りに思いを巡らすのも、
楽しい時間だなと思います。
みなさまのご予約を心よりお待ちしております。
イチカワ アヤ
*参考文献:森須磨子『しめかざり−−新年の願いを結ぶかたち』工作舎 2017