コラム|「ひと編みのことば」
しめかざり 2025-26 | 販売を開始いたしました
こんにちは。 先日11月13日(木)より、「しめかざり 2025-26」の通常販売を開始いたしました。 こちらの公式オンラインショップ、市川籠店の楽天市場店、そして実店舗にて販売中です。 実店舗では、定番品のほか、限定販売のしめかざりも数点ご用意しております。 ぜひ、ご覧くださいませ。 10月にご予約をいただきましたお客様のご注文分は、ただいま順次荷造りと発送を進めております。 これからお届けの方は、いましばらくお待ちいただければと思います。 よろしくお願いいたします。 材料となる「稲わら」の刈り取りは、稲にお米が実る(穂が出る)まえ、暑夏の盛りに行われます。日々、稲の伸び具合を見ながら行う収穫は天気とにらめっこ。実がなるギリギリまで、それでいてわら細工にしやすいよう、しっかりと葉が長く出るまでを見極めます。そして、ここから本格的にしめかざりの準備が始まります。お米が実るまえの稲わらは、「青刈り」や「ミトラズ」とも呼ばれます。まさにしめかざりを作るために栽培された稲わらが使われます。中央アルプスの山々から吹き下ろす風がそよぎ、刈り取りを待つ稲もさわさわと気持ちよさそうでした。稲を刈り始めたと思うと、あっという間に終わっていきます。「カシャン、カシャン」と小気味良い機械音に、刈り終わった後の田んぼの整然とした光景が印象的でした。 それでは、販売中のしめかざりについてご紹介します。こちらは「三拍子-さんびょうし-」。芯のある一本の縄から作りだす、端正で末広がりなかたちです。こちらは、「後光-ごこう-」。自然災害のない、平和でおだやかな日々をねがう、掛けかざりです。こちらは「寿酉-ことぶきどり-」。弊店では初期からご紹介しており、ご好評いただいているお飾りです。こちらは、とぐろを巻いたへびをかたどった、「へび “とぐろ”」という名のしめかざり。ピンと尻尾が立ったようすは、凛としていながらも、どこか愛嬌が感じられる佇まいです。こちらは、「円満‐えんまん‐」の姫サイズ。円‐まる‐は、始まりも終わりもないそのかたちから、「永遠」や「循環」の象徴とされています。こちらは「輪かざり」とよばれ、日本各地に見られるしめかざりのひとつ。輪かざりは、たとえば「ごぼうじめを神棚にかざる」というように、それをかざる場所があまり限定されていない、しめかざりの中ではもっとも汎用性の高いしめかざりです。こちらは、「レレレ | 茗荷箒-みょうがほうき-」。薬味などでよくつかわれる野菜の茗荷(みょうが)と、サッと取りだせて手軽に掃除ができる箒(ほうき)をかたどった、オリジナルデザインの掛けかざりです。こちらは「玉かざり」と呼ばれるしめかざりです。玉に見立てた輪の部分と、「サゲ」と言われる「わら(藁)」が垂れたかざりで、主に玄関にかざられることが多いものです。 そして、こちらは「ごぼう(牛蒡)じめ」と呼ばれるしめかざりです。縄を一定の太さで一文字に綯-な-ったもので、玄関や神棚に飾られることが多いおかざりです。 しめかざりがお手元に届いたときには、きっと稲わらの新鮮な、凛とした香りを感じていただけるかと思います。 どこに飾るか場所をきめて、その場をきれいに整えたらその新鮮な香りとともにしめかざりを飾る。 飾りながら、この一年を回想したりこれからの一年について思いを馳せたり。ちょっとした時間でも、きっと心静かにいられるときではないかと思います。 そして翌年の年末には、またしめかざりの香りとともに季節の到来を感じ、前年や昔を思いながら心穏やかなときを過ごす。 ほんの小さな行い、瞬間かもしれませんが、それがみなさまの大切な行事となることを願って。 ご来店をお待ちしております。 イチカワ アヤ
しめかざり 2025-26 | 販売を開始いたしました
青竹工房桐山のかご・古物/販売・受注会のご案内
昨日9/11より、“ひとつのテーブル” 特集展「青竹工房桐山 新作展 × 古道具」公式オンラインショップでの、販売会ならびに受注会をスタートいたしました。 ・青竹のかごの販売・受注期間 ・古物の販売期間 ともに【9/30(火)まで】となります。 *青竹工房桐山さんのかごにつきまして 今回の特集展は、この数年で桐山さんが作られた新作のかご数十点が一堂に会する初めての機会となります。公式オンラインショップにも新作の全商品を掲載いたします。 さらに今回は、新作だけにとどまらず、これまで弊店でご紹介・販売してきました青竹工房桐山さんの(一部をのぞく)多くの作品につきましても、新作と同様に店頭または公式オンラインショップにて受注を承ります。 材料や作り手の方の状況により受注数には限りがあるため、商品によっては受注期間中でも販売・受注を締め切ることがございます。(販売・受注終了となった商品は「SOLD OUT」表示となります。) 気になるものがございましたら、ぜひお早めのご注文をお待ちしております。 30年以上のキャリアを持つ桐山さんのたくさんの種類のかごを、ここまで幅広く受注を承ることも初めてのことだと思います。 この機会にご覧いただけましたら幸いです。 *古物につきまして こちらも公式オンラインショップにて、期間限定で販売しております。かつてはどんな使い方をされていたんだろうか、自分なら使い途はどうしよう、とあれこれ想像の膨らむ古道具たちが並んでおります。 こちらもどうぞおたのしみください。 「青竹工房桐山 新作展 × 古道具」 公式オンラインショップ販売・受注会 特設ページはこちらよりどうぞ ▽“ひとつのテーブル” 特集展青竹工房桐山 新作展 × 古道具かたちの記憶と、あたらしい手...
青竹工房桐山のかご・古物/販売・受注会のご案内
高知の下本さんを訪ねて 2
こんにちは。店主のイチカワトモタケです。 7/3(木)から、実店舗および公式オンラインショップにて “ひとつのテーブル” 特集展 持つためのデザイン | 下本一歩・炭竹のカトラリー を開催中です。 ご来店されたお客様がさっそく楽しんでくださっていて、下本さんが作られる竹カトラリーの魅力に、あらためて感服しています。 まだまだご用意がございますので、おひとりでも、ご家族やご友人をお誘いいただきご一緒にでも、ぜひお越しくださいませ。 さて、前回のコラムにつづいて、2回目は下本さんがカトラリー作りを始められたことについて書きたいと思います。 カトラリーを作りはじめる前はデザインや美術の勉強をされていたとのこと。本格的に下本さんが竹をつかって制作活動をされるようになったのは2006年から。 それから約20年のあいだ、竹をつかった、たくさんのプロダクトが下本さんの手から生み出されてきました。 はじまりは、今のカトラリー製作に欠かすことのできない「炭窯-すみがま-」を自ら作られるところからでした。 ひとことで「炭窯を自分で作る」といっても、それはそうそう簡単にできることではありません。下本さんは、そこにたくさんの方々の「たすけ」があったとおっしゃいます。 おじい様、おばあ様の土地に炭窯を作られるということで、地域の方をはじめ、ご高齢の方から若い方まで、たくさんの人が協力してくださったそうです。 そうして2001年に手づくりの炭窯が完成し、それから5年ほどはカシやナラの木をつかって炭作りをされていたそうです。 炭焼きをするときに、たくさんの煙が出ます。 その大量のけむりが出る煙突のところに、身近にあった竹でスプーンをつくり、かごに入れてつるしたのが下本さんの代名詞とも言える、コクのある風合いをもつカトラリーのはじまりだったそうです。 当時、下本さんが作られたスプーン。今のカトラリー製品の原形ともいえるかたちの数々(市川籠店撮影) この写真がとても印象的で、見せていただいたときにも“スプーンというよりは、真っ黒なアートピースのような姿”だと感じて私が見入っていると、下本さんはこうおっしゃいました。 「オブジェとして、っていうイメージでしたね、自分としては。一応、使えるオブジェみたいな」 こちらの写真にある黒いスプーンたちは、窯の中ではなく、出てくる煙に直にあて続けていたため、料理の味が変わるほどにおいもつよく、製品としてはつかえるものではなかったのだそう。 炭焼きから、カトラリー作りへ。 もともとはデザインを勉強されていましたが当時は、ある面で「デザイン」することに疲れていたという下本さん。 かたや炭窯を自分で作ることや木炭作りは、大変な仕事ではありますが、する作業そのものはいたってシンプル。 私はその話をお聞きしていて、もしかしたら、そのようなシンプルな作業を繰りかえしているうちに、おそらく無意識に、むくむくとデザインや創作意欲のようなものがふたたび下本さんの中に芽を出したのではないかと、感じました。 もしかすると、炭窯作りや木炭作りというシンプルな作業に向き合っていたその時間が、デザインに携わる下本さんにとって、人生の中でふと立ち止まるような大きなインターバルだったのかもしれません。 炭焼きをする建屋の屋根も、竹で葺-ふ-かれています。この葺いた竹に煙があたって色づいたものをつかって箸を作ったこともあったそう。 本格的に、炭窯をつかった竹のカトラリー作りをはじめられてからは、「機能的でありながら、端正な見た目と、主張しすぎないデザインを心がけています。」とご本人がおっしゃるとおり、つかう人の目線やつかい勝手と、デザインが見事に調和された「生活の道具としてのカトラリー」を作られつづけているように思います。...
高知の下本さんを訪ねて 2
高知の下本さんを訪ねて 1
こんにちは。店主のイチカワトモタケです。 7/3(木)から、実店舗および公式オンラインショップにて “ひとつのテーブル” 特集展 持つためのデザイン | 下本一歩・炭竹のカトラリー がはじまります。 「炭竹-すみたけ-」という名前は、私たちがつけた愛称です。 作り手の下本一歩-かずほ-さんによると、“切り出した竹は熱処理を施した後、自作した炭焼き窯でおよそ1週間かけて燻し、中まで乾燥させます。この工程により、竹の水分がしっかり抜けて、耐久性が高まります。燻された竹の外側は艶やかな黒色に。作品を象徴する煤竹の完成です。”とのこと。 下本さんはこの竹を「煤竹-すすたけ-」と呼ばれていますが、私どもの店では、かごを販売する際、べつの定義で「煤竹」という言葉をつかっているためこちらの竹は、あえて「炭竹」と呼ぶようにしています。 弊店でも長らくお取り扱いをさせていただいていた下本さんが作られる竹のカトラリー、このたび初めての個展開催となります。 それに先立ち、高知県でカトラリー作りをされている下本さんの工房を訪ねてまいりました。わたしがこちらを訪ねたのは、今回が2回目。 はじめて下本さんのところへ伺ったのは、2017年秋。それからあっという間に8年の月日が流れていたことにこれを書きながら気づき、驚いています。 下本さんと私は年が近いこともあり、お会いするたびに(東京にある弊店にも数回訪れてくださいました)、竹のことやカトラリーのことはもちろん、仕事や家族のことなどなど、話が広がります。 お会いした夜は、食事をご一緒して、お酒とおいしい高知の幸をいただきながらそうした話をして過ごす時間をとても楽しみにしています。 今回も、この8年の間、お互いにたくさんのことを経験し、変わらないもの、または変化していったことや変化せざるを得なかった多くのことを話しながら共有する、そういう時間となりました。 下本さんの工房は、高知市の中心部を流れる鏡川を奥深くさかのぼった山あいにあります。久しぶりにうかがったので、前に訪れたときの記憶もおぼろげだったのですが、また足を運んでみて、あらためて「奥地」だということを思い出し、実感しました。 高知市内から、さほど遠くないはずなのですが、自分が記憶していたよりも、さらにずっと奥深く山を分けいっていき、人の気配がほとんど感じられない、自然多き場所にありました。 そこは下本さんのお祖父様、お祖母様の代から守られている大事な場所。孫である一歩さんがカトラリーを作られる場所として、引き継いでいらっしゃいます。 工房へおじゃまする際に、下本さんの車に乗せていただいたのですが、険しい山道を進んでいくなか、車内では下本さんとこんな話をしていました。 「あの山の一部で淡竹-はちく-が枯れはじめている」 淡竹は下本さんのカトラリーにもすこしつかわれている材料。竹は120年に一度花が咲いて枯れ、一度枯れると、また竹細工につかえるようになるのに何年もかかるといわれている 「今年は例年よりも暑くなるのが早く、思ったよりも草が伸びている」 道中、ちょうど下本さんの知り合いの方があまりに伸びている草をみかねて、地域で決めていた草刈り日より前もって草刈りをされていました 「車一台しか通れないような山の細道で、対向車同士が向かい合ったとき、どのように立ち回るかで、地元の人かどうかが判断できる」 地元の人には、道のカーブごとに、どちらが先にバックするかという暗黙の了解があるそうです そのように山道をしばらく走っていくと、パッと視界が開けたところに下本さんの工房がありました。 まわりは山に囲まれ、さわやかな風が吹き、鳥のさえずりと、近くの鏡川の、清流の音がたえまなく聞こえてきます。 この地に、数年前に新しく工房を建てられたとのこと。...
高知の下本さんを訪ねて 1
タイ/カチュー村を訪ねて 4 完
カチューのかごが立ち上がるまでの最後の工程へ—— 丁寧に押しつぶされ、平らに整えられた素材が、手の中でかたちになっていく過程を追いました。 村の人びとの静かで確かな手しごと、その積み重ねに、あらためて心を打たれます。 動画や写真とともに、編みの現場の空気をお届けしています。 ちょっとした“こぼれ話”も添えて、シリーズ最後の一編です。
タイ/カチュー村を訪ねて 4 完