宝石のようなかご / ベルギーの作り手・ジェニーさん、ジェフカさん(後編)
ただいま、実店舗にて開催中の
「“ひとつのテーブル”特集展 -やなぎとヘーゼル/ドイツ・ベルギーのかご-」にて
ドイツの作り手、ベンジャミンさんによるヘーゼルとやなぎのかご、
そして、ベルギーのジェニーさん・ジェフカさん作の、やなぎのかごを、それぞれご紹介・販売しています。
どちらも日本では、本特集展がはじめてのご紹介となります。
ぜひこの機会に、実際にみていただけましたら嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
さて、今回のコラムでは、ベルギーのジェニーさん・ジェフカさんについて紹介いたします。
写真左がジェニーさん、右が息子のジェフカさんです。
お母様のジェニーさんは、やなぎのかごを編み始めて25年ほど。図書館で見つけた本ではじめてバスケットを編み、それからやなぎという素材に魅了されて、「本物の職人技」を探しもとめながら製作をつづけられてきました。
オランダにいるバスケットの職人さんから、理想的なやなぎの栽培方法や、かご編みテクニックを教えてもらったそうで、ほかにも「たくさんの人々が私の情熱に火をつけてくれました」とおっしゃいます。
お母様のかご編みへの情熱は、小さいころから、そばにいた息子のジェフカさんにも自然と受け継がれていたようで、それはジェニーさんの目にも明らかだったそうです。
ジェフカさんは5歳のときにはじめて自分のバスケットを作り、そして11歳のときには、自分が本当に作りたいのは繊細なやなぎ細工であるということに目覚めたとのこと。
彼の熱意におされて、ジェニーさんとジェフカさんは親子で2年間、オランダにいる細編み細工の名手のもとで、修行をされることになりました。
私たちがジェニーさん、ジェフカさんにはじめて会ったのは、2023年の夏。ポーランドにて開かれた「世界かご編み大会」に参加したときのことでした。
親子でコンクールに参加され、それぞれが作品を実演製作されていました。
ジェニーさんはやなぎとオークをつかったバスケット、ジェフカさんは細編みの小さなポットのようなかごを作られていました。
それぞれ違うタイプのかごを作られてはいましたが、材料になるひご作りはジェフカさんがお手伝いしたりと、お互いに助けあいながら作られているのが印象的でした。
やなぎは、ヨーロッパでのかご細工につかわれる素材として最も代表的なもので、その木はやわらかく、しなやか。何世紀にもわたって、さまざまな用途につかわれてきました。
ヨーロッパのかご細工には「ゆりかごから墓場まで」という言葉があり、これは生活の道具として必要なありとあらゆるものを自然の素材で作れる、という意味ですが、ジェニーさんは、ほんとうにゆりかごから棺桶まで、そしてその間にあるあらゆるものを、使いやすいかごとして加工されてきたとのこと。
そして、ジェニーさん・ジェフカさんがもっとも得意とされているのが、繊細な編みのかご細工。
この細かい細工は、やなぎの小枝を金属製のハサミのような道具で割り、カンナ台でひごの幅と厚みをミリ単位でけずっていき、木型をつかってそのまわりにかごを編みつけていきます。
とても手間のかかる技法で、こうしてできあがったかごを、ジェニーさんは「宝石のようなかご」とおっしゃいます。
ジェニーさん・ジェフカさんがかご編みにつかうやなぎは、ほぼ自家栽培のもの。また、収穫と加工もすべてが手作業とのこと。
やなぎは、乾燥させると温かみのある色合いになる4種類のものを栽培されています。
1年ものの小枝を、葉が落ちた冬に剪定し、その後、何日もかけて選別を行い、使いやすさ、太さ、長さで選別し、各タイプが丁寧にまとまるようにします。
その後、乾燥室へ。収穫のあとに乾燥させることで、木材が安定し、自然に収縮するようになるとのこと。
かごを編み始めるときに、バスケットごとにやなぎを選別し、まず2週間、水に入れて浸し、柔らかくなってから編みはじめます。
かご編みの職人になる前、ジェニーさんは教師や、ケアコーディネーターとして働かれていたとのこと。この仕事では、チームを指導し、特別なニーズを持つ子どもたちと一緒に活動をされていたそうです。
ジェフカさんは、バスケット職人になるための訓練に加えて、大工としての訓練も受け、自分で家具を作るために必要な技術を学ばれていたそうです。
彼はいずれ、バスケットと家具作りの技術を組み合わせたものを作りたいと考えられているとのこと。
「私たちはとても小さなバスケットから大きなものまで、多様なかごを編んでいます。
バラエティに富んでいるから面白いのです。
私たちが作る製品には機能があることが重要です。
自分たちのためにデザインすると、いつも丸い形に戻ってきます。
しかし、ここでも私たちは環境に目を向け、実用的に役立つバスケットを作るようにしています」
とジェニーさん。
また、ジェニーさんはおっしゃいます。
「このかご編みの分野でプロフェッショナルになるには、
かごを作るのに適した多くの道具とたくさんの補助具も必要です。
長年にわたり、私たちはカンナ台、金型、ツゲ材の小道具など、その製造に関して学んできました。」
2023年ポーランドでの世界かご編み大会にて、ジェニーさん・ジェフカさんの製作風景。
ここでつかわれている木製の道具も、それぞれが機能的で使いやすいように工夫されています。
実用的だけではなく、見た目にも美しいと感じます。
「美しいバスケットを作るには、それぞれのパーツに気を配り、
集中する必要があります。すべての動きが重要です。
かご底から直立する部分への立ち上げと、かごの縁を美しく仕上げることが最大の難関です。」
ジェニーさんは、いいます。
「私たちの工房での母と子のつながり、そして世界中のバスケット職人とのつながり。
また、何世紀にもわたってこの美しい工芸を受け継いできた先代たちともつながっている。
そして未来とのつながり、私たちのあとにつづく編み手たちとのつながり。
彼らが将来もこの工芸を続けられるように教育することが許されること。
これは私たちにとって非常に刺激的なことです。」
さいごに、ジェニーさんにうかがってみました。
「日本にご興味はありますか」
ジェニーさん「もちろんです! 日本のかご細工は、繊細なやなぎ細工のインスピレーションの源です。」
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“ひとつのテーブル”特集展
-やなぎとヘーゼル/ドイツ・ベルギーのかご-
2025年1月
9日(木),10日(金),11日(土),12日(日),13日(月祝)
16日(木),17日(金),18日(土)
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弊店の実店舗は東京・南千住にある小さな家屋で、売り場面積は6坪ほど。
その真ん中にはお店を占めるように、大きめのテーブルが鎮座していますが、
このテーブルに「やなぎ」や「ヘーゼル」のバスケットを並べて、皆さまをお迎えします。
なお、特集は真ん中のテーブルにて。
そのほかの棚は常設の商品をおいておりますので、いつもどおりご覧いただけます。
再入荷の商品のほか、新しく届いているものもご紹介していきます。
こちらもどうぞお楽しみください。
ご来店をお待ちしております!