黒竹をもとめて和歌山県へ 1
こんにちは。 イチカワ トモタケです。
8月も終わりに近づきましたが、まだしばらく暑い日がつづきそうです。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回のジャーナルでは、「黒竹(くろちく)」という竹についてご紹介します。
2026年の初夏、以前からお付き合いのある、和歌山県の竹材店を訪ねてきました。
私たちは竹をはじめとした自然素材でつくられたかごやざるをご紹介していますが、
日頃よくお客様から、
「竹そのものを購入することはできますか」
「こちらで竹材を注文できますか」
というお問い合わせをいただくことがあります。
かごやざるをご紹介するだけでも限られたスペースをつかっているため、
竹材そのものを店頭で扱うことは、なかなかむずかしいのが現状です。
それでも、良質な国産の竹を必要としている方に、何かかたちを整えて
お届けできないだろうか。そんなことを、以前から考えていました。
そこでこの夏に訪ねたのが、和歌山県で黒竹を専門に扱われている「金﨑竹材店」さんです。
日頃からお取引を通してお世話になっている竹材店で、
黒竹についてあらためてお話をうかがいながら、
ご希望されるお客さまへ竹材をお届けする方法についてもご相談してきました。
その訪問の様子とともに、黒竹という素材についてご紹介していきます。

東京から和歌山へは、新幹線と在来線を乗り継いで向かいました。
到着すると出迎えてくださったのが、金﨑竹材店の金﨑弘昭(かなさき ひろあき)さん。
とびきりの笑顔で迎えてくださいました。
今回は弘昭さんと、金﨑竹材店の代表であり、弘昭さんのお父様でもある
三代目・昭仁(あきひと)さんに、黒竹についてさまざまなお話をうかがいました。

弘昭さんの運転する車に乗せていただき、約8年ぶりに作業場を訪れました。
到着してまず目に飛び込んできたのは、ずらりと並んだ黒竹の束でした。

黒竹の伐採は、毎年9月中旬ごろから翌年2月ごろまで。ただ、その期間であればいつでも伐る、というわけではないそうです。
金﨑さんは今も暦を見ながら、「大つち(大犯土)」「小つち(小犯土)」とよばれる時期を避けて、竹を伐採しています。
大つち・小つちとは、古くから土に関わる仕事や、木や竹の伐採を慎むとされてきた期間のこと。
この時期に伐ると虫が入りやすいとも言い伝えられているそうで、金﨑竹材店さんでは、先人から受け継いできた知恵のひとつとして、今も暦を見ながら伐採の時期を見定めています。

伐採したばかりの竹は水分を多く含み、とても重いため、しばらく山に置いて、ある程度乾燥させるそうです。
そのあいだに葉も自然に落ちていき、それらはそのまま土に戻り、山の肥料にもなっていくとのことでした。

その後、竹は作業場へ運ばれます。
太いものは枝を落とし、作業場のなかで保管しながら、
それぞれの商品へと仕上げるための準備がはじまっていきます。

金﨑竹材店では、地元・和歌山県のほか、
高知県でも地主の方々の許可を得て、竹を伐採しているそうです。
和歌山から高知まではけっして近い距離ではありませんが、
トラックで通いながら竹林の手入れを行い、伐採から運搬まで一貫して手がけています。

食事を終えたところで、弘昭さんから、
「もしよかったら、近くに黒竹が生えているところがあるので、見に行きませんか」
と声をかけていただきました。
それまでに黒竹が実際に生えている様子を見たことがなかったので、
ぜひ、と見せていただくことにしました。
案内していただいたのは、地元の耕作放棄地を活用して、
金﨑竹材店で黒竹を植え、育てている場所です。
黒竹というと、鬱蒼とした竹林のなかに生えているようなすがたを想像していたので、
実際の様子をみて印象が変わりました。周囲には、イノシシなどの動物に
たけのこを食べられないよう、金網も張られています。
じつは近年、黒竹の仲間である淡竹(はちく)の開花が、全国各地で確認されています。
竹は種類によって、数十年から100年以上という長い周期で
花を咲かせるといわれ、開花後には枯れてしまうこともあります。
一度枯れると、ふたたび竹林が育つまでには長い時間がかかります。
黒竹を扱いつづけていくうえで、こうした変化に備えておくことも大切です。
三代目の昭仁さんは、先のことも考えながら、
すこしずつ黒竹を植え、この場所を整えてきたそうです。
今回は特別に、その黒竹の竹林のなかにも入らせていただきました。

まず目に飛び込んできたのは、黒竹のたけのこでした。まだ若いたけのこですが、皮はすでに黒褐色をしています。周囲に金網を設置していることもあり、動物による食害を受けることなく、すくすくと育っていました。 
そして、あたりを見渡すと、枝葉を大きく広げながら、のびのびと育つ黒竹のすがたがあちこちに見られました。 
そして、ふと気づいたことがありました。写真のように、木でいう幹にあたる部分、竹では「稈(かん)」とよばれるところを見ると、緑色をしているものがあります。てっきりこれは青竹かと思ったのですが、金﨑さんにうかがってみると、じつは黒竹も、1年目はこのような緑色をしているのだそうです。 
そして、この緑色の稈は、太陽の光を浴びながら、すこしずつ黒褐色へと変化していくそうです。 
つまり、たけのこが伸びてから1年目の竹は緑色で、2年目になるころからすこしずつ黒褐色へと変化していくということです。金﨑竹材店が管理するこの植林地では、2年目以降の竹を伐採しています。今はまだ緑色の1年目の竹も、翌年には黒褐色へと変わり、伐採の時期を迎えます。こうして、新しい竹を育てながら伐採していくサイクルを繰り返しているそうです。 
竹の節ごとに枝が伸び、青々と葉を広げる様子が印象的でした。 
こちらは黒竹の葉です。稈は黒褐色に変化していきますが、葉は緑色のまま。光を透かすような、みずみずしい若葉色でした。 
枝からさらに小枝を伸ばし、太陽の光を受けるように、横へ横へと広がっていました。

今回訪れたのは初夏だったため、実際に竹を伐採する様子を
見ることはできませんでしたが、それでも、最初に訪ねた作業場に黒竹が運ばれてくるまでに、
すでに多くの時間と手間がかけられていることを知ることができました。
そして、黒竹はここからさらに手を加えられ、ようやく商品として出荷できるすがたになっていきます。
金﨑弘昭さんに竹林を案内いただいた時の様子を、動画でご覧ください。
(※音楽が流れます)
次回のジャーナルでは、伐採された黒竹がどのような工程を経て
商品になっていくのか、その続きをご紹介します。


