竹が、編みひごになるまで ― 吉田さんご夫妻を訪ねて 5

こんにちは。 イチカワ トモタケです。
吉田竹物のお二人の特集展が、いよいよ始まります。
これまでのジャーナルでは、紀子さんと直樹さん、
それぞれのかご作りの様子をご紹介してきました。
今回のジャーナルでは、特集展で直樹さんが実演してくださる
竹のコーヒードリッパー作りにあわせて、
炭化竹からドリッパーを編むための竹ひごができるまでをご紹介します。

まずはこちら。
竹材倉庫から持ってきた、丸のままの炭化竹です。
白竹とはまたちがう、深みのある落ちついた色合いをしています。

炭化竹の節の、出っ張った部分を、竹割り包丁ですこしずつ削り落としていきます。 
それから、「みがき」とよばれる、竹の表皮を削り落とす作業に入ります。まず、竹が左右に転がらないよう支える専用の木の板を、壁に立てかけます。つづいて、炭化竹よりもすこし細く、長さのある竹を用意し、その竹に炭化竹を差しこみます。炭化竹が安定するように板に立てかけたら、準備完了です。 
両手で持つ特殊な刃物をつかい、かたいエナメル質の表皮をすこしずつ削り落としていきます。 
この「みがき」を施すことで、竹によって異なる表皮の模様や細かな傷を取りのぞき、表皮の割れをふせぐことができます。また、もともと光沢のある竹の表面が、より落ちついた質感に整えられます。 
刃物が当たる幅はほんの数mmほど。そのため、上から下へとなんども刃を当てながら、丸竹の表面を一周ぐるりと削っていきます。 
こちらは、削られて下に落ちた表皮です。これはすぐに捨てるのではなく、集めてたわしのようにまとめ、みがきを終えた竹に力を込めてこすりつけていきます。削ったあとの細かなバリを取りのぞくためです。こうすることで、竹の表面がなめらかになり、手触りも整っていきます。
直樹さんが炭化竹の表皮を磨いている様子、動画でご覧ください。
(※音楽が流れます)

つづいては、竹を割っていく作業です。
ここでつかうのが、「菊割り(きくわり)」とよばれる道具です。
鉄でできていて、手にするとずっしりと重さがあります。
写真の菊割りは、丸竹を一度に10分割できるもの。
ほかにも3分割、5分割、8分割などがあり、割りたい本数や用途に応じてつかい分けられています。

パキッ、パキッと竹を割る音がつづき、
吉田さんのそばには、細く割られた竹がつぎつぎと重なっていきます。

つぎにつかうのは、こちらの年季の入った機械です。
お聞きすると、竹の厚みを薄くするためのもので、
この工程は「荒剥ぎ(あらはぎ)」とよばれます。
竹は、表皮に近い外側の部分ほど、かたく丈夫です。
今回のかご作りでは、その丈夫な外側の部分をのこし、内側の部分を剥いでいきます。
手と刃物をつかって剥ぐこともできますが、
この機械をつかうと作業がずっと早いとのこと。
こうした機械は今では数もすくなくなっており、
吉田さんは、つかわれなくなったものを譲り受け、大切に使いつづけています。

さきほどの竹をこの機械に通すと、上段からは削ぎ落とされた竹の内側部分が、
下段からはかご作りにつかうひごが出てくる仕組みになっています。
上段から出てきた竹も、吉田さんご夫妻の場合は捨てずに、
お風呂を沸かす薪や、薪ストーブの燃料としてつかっているそうです。

「荒割り」「荒剥ぎ」を経たあとは、
竹の幅をさらに細くしていく「中割り(なかわり)」の工程に移ります。

中割りを終えると、直樹さんはふたたび機械のもとへ戻り、まず機械に油を差します。それから、細くなった竹ひごを一本ずつ、機械に通していきます。 
こちらは、先ほどの「荒剥ぎ」につかったものとは別の機械です。荒剥ぎの機械よりも、さらに薄く竹を剥ぐことができ、この工程は「薄剥ぎ(うすはぎ)」とよばれます。 
竹ひごの材料作りは、作り手によってその方法もさまざまです。こうした工程をすべて手と刃物で行う方もいれば、吉田さんのように、工程の一部に機械を取り入れる方もいます。機械を使うことで、材料作りにかかる時間を短くすることができ、そのぶん販売価格を抑えることにもつながります。
また、毎日の仕事としてかご作りを長くつづけていくことを考えると、体への負担を減らすことも大切だと感じます。
さて、すべての竹ひごを機械に通し、薄剥ぎの工程が終わりました。つかい終えた機械は、すぐに元の場所へ。今では貴重になった、竹を加工する道具だからこそ、扱いにも自然と気が配られているように感じました。
直樹さんが竹を割り、厚みを薄くする「割り・剥ぎ」の工程を、動画でご覧ください。
(※音楽が流れます)

屋外での作業を終えた直樹さんは、加工途中の竹を手に、
紀子さんも作業されていた場所へ戻ってこられました。

こうしてようやく、竹のコーヒードリッパーを編むためのひごが出来上がりました。
竹材倉庫にならんでいた丸竹の状態からここまでの工程を振りかえると、
一本の竹ひごを作るまでにも、これほど多くの手間がかかっていることに驚かされます。
そして、ここまできても、まだ「編み始めていない」のです。
かご作りというと、竹を編む工程に目が向きますが、
丸竹から編みはじめられる状態になるまでにも、いくつもの工程があります。
今回、その一つひとつを見せていただき、かご作りにおいて、
材料作りが占める部分の大きさをあらためて実感しました。
直樹さんが竹ひごの幅と厚みを整える「幅取り」と「銑がけ」の工程を、動画でご覧ください。
(※音楽が流れます)

さらに、竹のコーヒードリッパーには籐も編みこまれているため、
籐もまた、編むためのひごに整えておく必要があります。
また、ドリッパーの縁につかわれているすこし厚みのある竹も、
これとは別に準備しなければなりません。
日本各地の作り手を訪ねていると、ときどき、
「竹割り10年」
・・・竹かご作りでは、竹の材料を一人前に準備できるようになるまで10年かかる。
ほかにも
「材料作りが7割、編むのは3割」
あるいは「材料作りが8割、編むのは2割」。
そんな言葉を耳にすることがあります。
もちろん、編むこともけっして簡単な作業ではありません。
それでも、直樹さんが丸竹から一つひとつ材料を整えていく工程を見ていると、
これらの言葉が示す意味を、あらためて実感したように思います。
今回の特集展では、10月17日(土)に、
直樹さんが竹のコーヒードリッパー作りを実演してくださいます。
ここまでいくつもの工程を経て作られた竹ひごが、
今度はどのようにコーヒードリッパーへと編み上げられていくのか。
ぜひ店頭で、その様子をご覧ください。
皆さまのご来店をお待ちしております。
おわり
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※なお、今回の実演は、一般のお客様に竹細工のものづくりを
ご覧いただくことを目的としております。
また店内のスペースにも限りがあるため、10月17日(土)の実演につきましては、
竹細工の作り手の方や、製作に携わる方のご見学はご遠慮くださいますようお願いいたします。
作り手の方や製作に携わる方とお見受けした場合には、
こちらからお声がけのうえ、ご見学をお断りする場合がございます。
あらかじめご了承ください。

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“ひとつのテーブル” 特集展
吉田竹物 | ふたりの手、ふたつの色
– 白竹と炭化竹の籠 –
2026年
10月16日(金)、17日(土)*、18日(日)
10月23日(金)、24日(土)、25日(日)
10月30日(金)、31日(土)、11月1日(日)
*10月17日(土)は、吉田直樹さんが在店され、
コーヒードリッパー製作の実演をしてくださいます。
*上記日程は11時から16時までの間、どなたでもご来店いただけます。
*10月19日(月)、22日(木)、26日(月)、29日(木)は予約制にてご来店いただけます。
下記のページよりお申し込みください。















