-椀かご-- 編み目と風の通り道
久しぶりのコラム掲載では、日本の各地から届いている「椀かご」をご紹介します。
椀かごは茶碗かごとも呼ばれ、もともとは洗った茶碗や鉢、お皿などを入れておくかごのことでした。
地域によっても違いますが、素材としては「オカメザサ」という竹の稈(かん/竹や稲などの中が空洞になっている茎のこと)や
「シダ」という植物の茎で、それらを割らずに数本束ねて作られたものがむかしは多かったようです。
特徴としてどちらも「水切れがよい」ことがあげられます。
オカメザサやシダの茎表面はツルツルとしていて水分を弾くため、
かごの素材そのものに水が浸透してそこからカビが生えたり腐食したりして
劣化することが少なく、長持ちする素材として重宝されていたのではないかと思います。
ただ、オカメザサやシダの椀かごは今ではとても希少な存在となっており、
弊店でもなかなか入荷がないというのが現状です。
それでも今、店内を見渡せば、しっかりと存在感を放っている形も素材もことなる椀かごたち。
弊店でお取り扱いしているのは、「竹」や「笹」製のもの。
椀かごをお探しのお客様から、”洗った食器をそのまま入れられますか”というご質問をよく頂きます。
もともとの茶碗かごの使い方がそうであるので、
そういうイメージを持たれているのは自然なことかと思います。
しかし残念ながら一部の商品をのぞき、
弊店でご紹介しているほとんどの椀かごが”水切りかご”としては使えません。
それは竹や笹の性質と、かごの仕様によるもので、
いずれも湿気に弱く放っておくとカビが発生して
かごの劣化へとつながるため、おすすめしておりません。
長野の戸隠地域ではこのような形のかごを”茶盆かご”と呼びます。
茶盆とは、急須や湯呑茶碗、茶筒などの茶器を載せておく盆のこと。
こちらでご紹介する椀かごも、茶盆のような使い方がよいのではないかと思います。
日常でよくつかう茶器や、食器、お酒の器などを入れておく定位置のかごとして。
洗ってよく水を拭きとったあと、もう少ししっかりと乾かしたい
陶器や漆器などの保管かごとして。
フルーツや野菜、お菓子を載せるかごとしても。
ここでご紹介するのはいずれも実用的なだけでなく、
置いてあるその椀かごの佇まいを眺めるというだけでも心和むものです。
それぞれ形や素材のことなる椀かごたちですが、いずれも共通している特徴があります。
おもな4つの特徴をご紹介します。
椀かごの特徴-1- ”高台”がついている
”高台(こうだい)”とは、お茶碗やお皿にも見られるような底についた輪の形をした支えの台のことです。
かごの底面が直にテーブルや棚板の面に接地していると、通気が取れずに水分や湿気がたまり、かごに黒ずみやカビがついたり中にいれたものが傷んだりすることがあります。
高台があることで、底があがって通気をとれるようになります。
こちらの写真のように、高台ではなく、かごの四隅に”足”がついているパターンもあります。
こちらも機能としてはおなじで、底面を上げて風通しをよくするためにつけられています。
椀かごの特徴-2- ”力竹”がついている
竹製のかごによく見られる力竹(ちからだけ)。
竹ひごはよく”しなる”ため、かごの中に少し重みのあるものを入れると、底面に負担がかかってしまうことも。それを支えるのが力竹で、少し重い物を入れても底面に安定感がでます。
こちらは水切りかごの底面に入った力竹。
このかごのように面積が広いほど底面がしなりますが、太くて厚い竹ひごがX字に入り、たくさん入れても安心感のある作りになっています。
椀かごの特徴-3- かごの側面が立っている
たとえば平たい形をしたざるだと、器を重ねておいたときにすべり出てしまうと思いますが、こちらは中に入れたものがとび出ないように脇から支えてくれます。
中に入れたものがあまり見えず、編み目そのものを楽しめるのも嬉しいところです。
こちらは水切りざるの側面です。
そんなにかごの高さがないため、置いてあっても圧迫感がなく、入れたり取り出したりしやすく使い勝手のよい形です。
椀かごの特徴-4- 編み目が開いている
かごの底面をみると、編み目が詰まったものはなく、いずれも隙間があいています。
これは器などの湿気を外に逃すための工夫です。
隙間は小さいので、中に入れたものがこぼれ落ちることはなさそうです。
こちらは水切りかごの底面です。水を切るための隙間があいています。
今現在、弊店でご紹介している椀かごの中で唯一”水切りかご”としてお使いいただけるものです。
理由は、底面に”皮付きの竹ひご”を使用していて、竹の皮は水を弾く性質があるためです。
水切りかごとして使える耐性があります。
それでは、弊店に今届いている椀かごのラインナップをご紹介してまいります。
※商品名をクリックすると、オンラインショップの各商品ページへと移行します。
広島で作られている、青竹(真竹)の水切りかごです。
こちらは竹の皮を底面表側に使用しているため、水切りが良いのが特徴です。
竹や木のカトラリー、ヘラなどの調理道具を乾かすのにも重宝します。
こちらはおなじ水切りかごの大サイズ。スッと四つ足で立つ姿がなんとも凛々しく見えます。
水や熱湯にも強いですが、底の裏側は水が浸透しやすい竹の身部分を使っていますので、こまめに水を拭きとり、日陰で乾かして使うのがよいかと思います。
長野・戸隠地域の”茶盆かご”シリーズのひとつです。
根曲竹(ねまがりだけ)という笹を使っており、竹の皮表面はつるつるとして手触りのよい素材です。
こちらは浅めの作りで、どちらかというと竹ひごが細く、編み目が細かい。上から見たときに口が丸い形をしているタイプです。
おなじく浅く丸いタイプの、大きい方のサイズです。
カップやグラスですと5-6個が載せられます。
浅いタイプは中に入っているものがほどよく見えます。かごとの組み合わせを楽しむのもよいですね。
こちらはおなじ浅いタイプで、口部分が楕円型の茶碗かご。
くっきりとした楕円は戸隠の根曲竹細工ならではの形で、見飽きないなあ、と常々感じます。
楕円型は四角形にちかいこともあり、丸い形に比べると置く場所に収まりやすいのもよいところです。
こちらも戸隠・根曲竹製の茶盆かごシリーズ。定番タイプの4種類です。
「浅」シリーズに比べると、かごに深さがあり、竹ひごの幅が少し広いため、ざっくりとした編み目になっています。
もちろん、かごの強度としては遜色なく、使い勝手のよいかごです。
定番シリーズの楕円型、中サイズです。
カップ2つに茶漉し、茶葉、ハチミツを入れていつものお茶セットとして。
椀かごぐらいのサイズのかごなら置く場所をあまり選ばないので、そのときどきで使い方を変えるのもよさそうです。
そして定番シリーズ、楕円型、大サイズです。
こちらも2-3人分のよくつかう器を入れておくのにちょうどよいです。
かごに深さがあるぶん、目隠ししたい小物などを入れておくのにも便利そう。
それぞれのかご、詳細は商品ページをご覧いただければと思います。
いずれも現時点(2024年3月20日)で在庫があるものについてご紹介しております。
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なにとぞご了承ください。
自然素材で作られた椀かご自体が今では貴重な存在となっていますが、
きちんとケアをして丁寧に使えば、長く付き合えるかごとなります。
ぜひその良さをお試しください。
イチカワ アヤ