コラム

-予約販売-- しめかざり 2023 「小さな輪じめ」のこと
今年もしめかざりのご予約受付を承ります。 ご予約期間は2023年10月2日(月)正午12時〜10月16日(月)正午12時となっております。 さて、このご予約期間では、しめかざりのみの総額で税込3,850円(税抜3,500円)以上ご注文いただいた方へ、ご予約特典として長野の稲わら製「輪(わ)かざり」をおひとつプレゼントいたします。 (*通常商品や送料との合算ではありませんので、ご注意ください。) 輪かざりも各地に見られる、しめかざりの一つです。手に載るほどのちいさなかわいらしいサイズですが、丁寧にしっかりと編まれた質のよい輪かざりです。 わらを綯(な)って縄にしたものを輪っかの形にしています。 張りのある、しめかざりの「モト(わらの根元の方)」です。 こちらを「ウラ」といいます。漢字では「末」と書き、先という意味があります。 輪かざりは、たとえば「ごぼうじめを神棚に飾る」というように、それを飾る場所があまり限定されていない、しめかざりの中ではもっとも汎用性の高いしめかざりです。 主には、台所やお風呂、トイレなどの水回りに飾られます。 輪かざりには、1年間頑張ってくれた”道具”をねぎらい、感謝する役目があるとのこと。 その家や人それぞれの暮らしに合わせて、一年をともにしてきた大切な道具に。 窓ぎわ 勝手口 ほうき、掃除機 冷蔵庫 オーブン アイロン 自動車、バイク 自転車 農機具 PC カバン おもちゃ... など ご自身の労いたい、大切な何かに飾って、新しい一年をお迎えいただけたら嬉しいです。 みなさまのご予約を心よりお待ちしております。 イチカワ アヤ
-予約販売-- しめかざり 2023 「小さな輪じめ」のこと

世界かご編み大会2023 in ポーランド 9 完 -未来への光-
いよいよ「第5回 世界かご編み大会 in ポーランド」のコラム、最終回となりました。 2日間にわたる実演製作が終わり、安堵した表情を見せる参加者たちでしたが、主催者から表彰式が始まると伝えられると、また、一種の独特の緊張感に包まれていきます。 各部門ごとに表彰されていきますが、最初の1人が呼ばれ始めると、会場は「わっ」と手放しの歓声と拍手で盛り上がり、雰囲気がほぐれていきます。 それぞれの部門ごとに名前が呼ばれると表彰台に立ち、賞状と賞金パネルとかごで編まれたトロフィーなどが授与されます。 そして、日本代表として参加された佐々木さんは、実演のかご部門でなんと入賞されました!ご本人は呼ばれると思っていなかったようで、驚いて客席の後方から急いで前に移動されていました。お名前が呼ばれた時には自分のことのように、うれしかったのを今でも覚えています。 各部門の表彰が終わった後には、いよいよ今大会における各部門を超越した総合グランプリの発表です。 今回の総合グランプリに輝いたのは、こちらの方です! ベルギーから来ていたジェフカさんです。なんと彼はまだ20歳の青年。しかし、この大会に年齢は関係ありません。とにかくその技術や仕上がりが今大会No.1と認められたことになります。 私も初日から彼の材料作りの様子などを見ていましたが、その作業への気迫と、そこから仕上がっていくかごへの向き合い方は、鬼気迫るものがありました。 一度話し始めると、20歳の青年に戻るのですが、かご作りになると、何かが憑依したようにその若くしなやかな体をうまく使い、シャッシャッと材料をこしらえていました。 会場はスタンディングオベーションとなり、そこには疑いのない歓声と拍手がなかなか鳴り止むことがありませんでした。 お互いがその腕を認め合っているということが、わかるような実に温かい表情と温度のある拍手の贈り方でした。 主催者の間に立つジェフカさん お母様のジェニーさんと。 ジェフカさんとジェニーさんが作られたものが並ぶブース 大会の総合グランプリの発表をもって、グランドフィナーレとなりました。それと同時に大雨が降り始めました。この大会の終わりを惜しんでいるかのような、強く大粒の雨が会場の屋根を叩き続けました。 大会終了後には、各国のメンバーでお別れや再会を誓う言葉をかけ合いながら、記念撮影が続きます。 2015年、2019年、2023年と3回にわたって共に参加してきた台湾チームと。 ドイツチームと。次はリヒテンフェルスかご祭りでの再会を誓って。 ジェフカさんと佐々木さん 未来への光を感じさせてくれるお2人 思いっきりハグをして、握手をして、再会を誓った後、各々帰る方向は大きく異なり、陸路で移動する近隣国のメンバーは、車への荷物を運び始めたと思ったら、あっという間に帰路に。 我々日本チームは、長い長いフライトが待っています。 今大会は、かご作りをされる佐々木さんにとって、大きな出来事だったとのこと。 「これまでの人生で一番おもしろい経験をしたかもしれない」 とまで、言ってくださった言葉がいつまでも私の耳に残っています。 長らくこの大会のコラムにお付き合いいただきありがとうございます。今回で「第5回 世界かご編み大会2023 in ポーランド」のコラムは終わりになります。...
世界かご編み大会2023 in ポーランド 9 完 -未来への光-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 8 -実演作品の完成へ-
たくさんの熱気とコミュニケーション、そして、時折会場を盛り上げてくれるウクライナの声楽隊の歌声を感じながら、それぞれの参加者の作業も佳境に入っていきます。 最初は、ただの細長い棒状の束だったものが、人の手によって、一つ一つ編み上げられていき、そして、そこにいきいきとしたかごとしての形が現れていきます。その揺るぎない確かなものが存在感を増していく不思議。 少し乾かして形を落ち着かせる人や 縁の始末をする人も多く出てきます。 他にも持ち手の取り付けにかかる人、 身のかごと合わせる蓋の寸法の確認をする人と、各々が仕上げ段階に入っていきます。 中には2つ目を作っている方や、 さらにもっとたくさんの数を作っている方も。 佐々木さんも手提げを作り終えたと思ったら、いつの間にか2つ目を作られていたのには驚きました。 佐々木さんも無事に実演作品のエントリーを審査員の方にすることができました 今大会2日間の実演で作られたの編み細工の数々、完成品の一部をご覧ください。 たった2日間で材料を揃えるところから、それぞれの作り手の方が、ここまで仕上げてきたと思うと、感無量でした。そしてこれだけの国籍の方のものが一堂に会することは実に稀有なことだということも。 伝統的なものから、オブジェ、家具に近いものまで、多種多様な作品が並んでいました。私たちの店で扱うかごは、実用品が多いですが、編み細工の幅広さ、自由さをあらためて感じさせてくれる作品ばかりでした。 岩手のさわぐるみを使った佐々木さんのかごも無事に出来上がり、私も本当にホッとしました。遠く離れたポーランドで、1から編み始め、たくさんの人をコミュニケーションをとりながら、2日間かけて完成したかごには、また一層のありがたみを感じます。 さあ、いよいよかごが出揃いましたので、この大会も大詰め、表彰式となります。あと、少しお付き合いいただけたら。 イチカワトモタケ +++++++++++++++++++ つづく
世界かご編み大会2023 in ポーランド 8 -実演作品の完成へ-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 7 -ポーランドに隣接する国々-
スウェーデン、ドイツ、ポーランドのセルフェンタメンバーとの植物園、と展示や交流をして来ましたが、他にもまだ展示やブースを出している国がありました。 まずは、ポーランドの東南地方が隣り合っているウクライナからです。大変な状況下にありながらも、素晴らしい展示を準備され、販売ブースも展開していました。ポーランドの多くの難民受け入れの話などを聞いていたので、このウクライナのみなさんの展示のパワーには驚きました。人々の生活は続いている、のだと。 「Uklaine bloom!-ウクライナの輝き(花盛り)」 かごについては麦わら細工が多いウクライナにおいて、その茎や穂を用いて、素晴らしいリースを作っていました。 リトアニアで「ソダス」と呼ばれる飾りも見られました。麦わら(Straw)細工の共通点かもしれません。 麦わらを染めたりして、すだれ状にしたもの(写真左)や、人形のような造形も。 草細工の柔らかさをうまく使い、さまざまな形を作っているのが印象的です。その他、やなぎやパインのような素材で作られたかごも。 麦わらの敷き物に、バッグに帽子。日本の稲わらの利用に近い感覚です。 販売ブースもあり、さまざまなかご細工や伝統的な紋様をあしらった布なども並んでいました。支援になるかはわかりませんが、佐々木さんと私も気に入ったものがあったので、いくつか購入させてもらいました。 続いては、ポーランドの南で隣接しているスロバキアの展示です。 スロバキアでもポーランドや他のヨーロッパ諸国同様に「やなぎ」を使った細工をします。 細かい細工も見ることができます。 美しく、実用性がありそうなものも。 こちらはとうもろこしの皮を使ったかごです。実に素朴で、そしてしっかりと編まれています。 かご作りで使われる道具も展示されていました。 スロバキアの民俗芸術センターのトマスさん(写真左)。2019年大会でも展示や交流をしたこともあり、お互いに再会を喜び合いました。私の名前もご自身の名前に近いことから覚えていてくれました。 写真真ん中の赤と青の機械は、ひご作りマシーンです。かごを作る人にとって、編む前の材料をこしらえるのが一番の大事な仕事とも言われます。それを少しでも精度を上げて効率化、高速化したいのはみんなの願いです。かごの作り手でもあり、今大会の審査員である「JURY」メンバーも熱心にこの機械について質問をしています。 続いては、反対にポーランドと北で接するリトアニアのかご販売ブースを訪ねました。 こちらはリトアニアの販売ブースです。たくさんのかごがあり、ずっとお客さんが絶えず、盛り上がっていました。 販売ブースに立たれていたご夫妻はコンテストにも参加されていて、大忙しのようでした。 他にも職人さんをこちらの工房は抱えているようで、たくさんのかごをお持ちのようでした。実直な作りが多くとても良い印象を受けました。 佐々木さんと私が熱心に、かごを見つめていると、奥様が「あなたたち、もっと見たかったらこちらへどうぞ」と、会場の外に停めてある車まで、案内してくれました。特注かと思うくらい、大きなメルセデスのバンの後ろをガチャリと開けて、「まだ、ここにもあるから気に入ったのがあれば、持って行っていいわよ」と。 夢のような車内でした。出番を待つ、たくさんのかご。 最後は地元ポーランドのかごの販売ブースです。 一番ブースもかごの数も多いです。 圧倒的なかごの数でした。 かごだけではなく、家具のようなものも多く並んでいます。 スツールもよくできています。 材料のやなぎもこのような束で売られています。日本で言うと、かごの販売会に材料の竹が売られているというイメージでしょうか。それだけ、材料を扱う人がいて、買う人もいるということを表しています。...
世界かご編み大会2023 in ポーランド 7 -ポーランドに隣接する国々-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 6 -セルフェンタとのひと時@ポズナン植物園-
ポーランドでの世界大会渡航前に一つ、会合のアポイントをいただいていました。 現在、私たちがご紹介するポーランドのかごを、現地で取りまとめてくださっている「セルフェンタ」というグループからのお誘いです。 彼女たちはポーランドのかごの作り手を訪ね歩き、そして、そのかご文化を国内外の人々に伝え、その技術やものが次の世代へ続いていくように、と日々奮闘されています。 会場まで車で迎えにきてくれました。赤いワゴン車がかっこよかったです。 そんなセルフェンタメンバーはこの大会の開催中に、ちょうどポズナンにある植物園(Poznan Botanical Gardens)で、がまを使ったワークショップを行なっているということでした。せっかくの機会ですから、大会の合間をぬって、佐々木さんと見学させていただくことに。 会場から植物園への20分ほどのドライブ中もたくさんの話に花が咲きます こちらの植物園は、ポーランドという大陸の一部の国の利点を生かし、アジアやヨーロッパ全体からたくさんの植物を集めているとのことです。 その植物園の一角に、素敵なデザインの建物がありました。この建物の中でセルフェンタチームが、ポーランドのかごの企画展を2階で行っているとのこと。また、同時にがまを使ったワークショップも1階で開かれていました。 指南役であるウツィアさん(写真左)。がまを使ったワークショップが得意だとのこと。 みなさん熱心にがまを使って、かごを編んでいます。 年齢層は比較的若い方が参加していた印象です。10人ほどの参加者の中で男性も2人ほどいらっしゃいました。 セルフェンタを主宰するパウリーナさん(青いワンピースの女性)は、ポーランド中を走りまわり、たくさんの作り手のもとを訪ねられて、熱心にかごの研究・紹介を続けていらっしゃいます。 ポーランドも日本と同様に、かごを作れる職人は減っていく一方とのこと。最後のお一人しか作れないというかごも、多く存在しているそうです。 ポーランドも素材としては、やなぎが一番多いですが、他にもヘーゼル、パインなどを材料にしたものもあります。 こちらはヘーゼルを使った、四角い足付き、持ち手付きかご。造形が素晴らしいと思いました。 ポーランドには、マツ科の植物の根っこを使ったかごもあります。その根っこそのものの迫力ある展示。Zogata(ゾガッタ)というかごです。(こちらから商品ページへ) パンをのせる、麦わらを使った大皿のようなタイプのかごもあります。 日本の岡山県には行われるヒメガマ(学名:Typha domingensis)細工があります。ポーランドにも同様にガマ(学名:Typha latifolia L.)をかごにする文化があります。遠く離れた地においても似た植物を加工していること、人々の営み、植物を加工する知恵の共通に感動を覚えます。 日本ですと稲わら(=米)をかごの材料にしますが、ポーランドでは、麦わら(=ライ麦パン)をかごの材料にします。その土地で食べられている主食とかご作りには密接な関係があります。実を食し、残った茎や葉を生活道具にする先人の無駄のなさ、合理性にここでも気付かされます。 かごを編む時の道具も、実にそれぞれの土地で研ぎ澄まされています。「よいかご作り」に、「最適な道具」はいつもセットです。ポイントは、高価な道具が、必ずしも良いわけではないということでしょうか。 急に降り出したサンシャワー(天気雨)。植物は、みずみずしく輝いていました 今回の大会は、近代的なコンクリート作りの建物の中で行われたため、 このような植物がおおらかに繁茂する植物園を散策しながら、交流を深められたことはうれしい時間でした。 まるで別世界にしばらくいたような感覚があるほど、元気な植物の楽園。 日本の植物を展示しているエリアで、山ぶどうの蔓を発見した佐々木さんと、それに興奮して、触って確認するパウリーナさん。どこへ行っても、かごや素材への情熱は高いです。...

世界かご編み大会2023 in ポーランド 5 -ドイツの展示-
前回のスウェーデンに続いて、ドイツチームの展示のご紹介です。 実は、ドイツには日本と同じように、かご細工を学ぶための施設があります。日本の大分県別府市にある竹工芸訓練センターは2023年現在、2年制で1学年12名が学ぶということになっています。 ドイツは3年制で同じく、1学年10名が学ぶシステムとのとことです。 ドイツのかご細工の材料はほとんどが「やなぎ」を使った細工です。日本の竹細工に比べますと、よりアート色が強く、オブジェのような造形のものも多いです。 大きなスペースを美しく使い、今回は卒業生が製作した作品を中心に展示が作られていました。 リュックを作った方や、 プラスティックの折り畳みコンテナを、やなぎと木材で作ってみた人、 チェスセットを作った人まで。 細編みで、実に精巧に作られています。 その他、訓練施設の様子が映像で見られたり、 卒業生による実演や、使われている道具を見ることができるなど、充実した展示となっていました。 このようなかごを編むための道具も、しっかりと作られているところがドイツらしいと言えるのかもしれません。 会場には「かごクィーン」もプロモーションに参加していました。クィーンの横の人形もまた、やなぎで編まれたかご細工です。 ドイツにはリヒテンフェルスという、いわば「かごの町」があり、毎年、秋にお祭りが開かれています。かごの訓練施設もその町にあります。 もともとかごの町である場所がお祭りの時期には、さらにかご細工一色になるそうです。 町中に編み細工のインスタレーションなどが設置されたり、作り手が実演をしていたりと、楽しい数日になるとのことで、私たちもぜひ訪れたいと思っています。 そのようなお祭り開催の中心人物であり、今回、丁寧に私にも説明をしてくださったマンフレッドさんです。 かごへの情熱を精いっぱい話してくださる彼と、たくさんの話をじっくりとすることができました。 リヒテンフェルスのお祭りの歴史は長く、400年とも500年とも言われていること ドイツでは施設で3年間、やなぎのかご作りが勉強できるが、卒業後それを職業にできている人はほとんどいないこと 施設では、卒業後の仕事として必要な経営的な内容のカリキュラムはないこと その3年間は税金を使った事業でもあるので、せっかく身につけた技術なのに仕事として続かないことは、実にもったいないと感じていること 残念ながら、現在ドイツでは、かごを作っても買い取ってくれるようなお店がなくなってしまったこと。 卒業生の販路は、いろいろな場所で開催されるクラフトマーケットやSNSやHPでの販売がほとんどということ。 私はそれを聞いて、実に複雑な思いになりました。販売という点において、日本と同じような状況、またはもっと厳しい状況でもあると思ったからです。 作り手の方にとって、どんなに技術があっても、かごをうまく作れたとしても、売り先がない、または売り先が安定していない状況だということです。コロナのような疫病で、数年間クラフトマーケットが開催されないというようなことも起こりうるということです。 私たち自身は、今の時代、一方で作り手の方が単独でSNSやHPを駆使して販売もできるわけですが、もう一方で、作り手と売り手が協力して、お客様に販売することも、理にかなっていると思っています。残念ながら、ドイツにはその「売り手」を担う人が誰もいなくなってしまったという現状のようです。 私たちも他人事ではありません。かく言う私たちのお店も元々は先代で閉める予定だったお店でしたので、もしかしたら、同じ状況になっていたかもしれません。 マンフレッドさんたちは、その状況に危機感を持っていて、そのようなかご細工を販売できるお店を計画されているとのこと。 また、同時にそのような状況から、現在私たちのように、かごを専門として国内外のかごの作り手の方と関係を作って、お客様に販売しているお店は貴重だとおっしゃいました。...