Columns – "Weaving Words"

世界かご編み大会2023 in ポーランド 5 -ドイツの展示-
前回のスウェーデンに続いて、ドイツチームの展示のご紹介です。 実は、ドイツには日本と同じように、かご細工を学ぶための施設があります。日本の大分県別府市にある竹工芸訓練センターは2023年現在、2年制で1学年12名が学ぶということになっています。 ドイツは3年制で同じく、1学年10名が学ぶシステムとのとことです。 ドイツのかご細工の材料はほとんどが「やなぎ」を使った細工です。日本の竹細工に比べますと、よりアート色が強く、オブジェのような造形のものも多いです。 大きなスペースを美しく使い、今回は卒業生が製作した作品を中心に展示が作られていました。 リュックを作った方や、 プラスティックの折り畳みコンテナを、やなぎと木材で作ってみた人、 チェスセットを作った人まで。 細編みで、実に精巧に作られています。 その他、訓練施設の様子が映像で見られたり、 卒業生による実演や、使われている道具を見ることができるなど、充実した展示となっていました。 このようなかごを編むための道具も、しっかりと作られているところがドイツらしいと言えるのかもしれません。 会場には「かごクィーン」もプロモーションに参加していました。クィーンの横の人形もまた、やなぎで編まれたかご細工です。 ドイツにはリヒテンフェルスという、いわば「かごの町」があり、毎年、秋にお祭りが開かれています。かごの訓練施設もその町にあります。 もともとかごの町である場所がお祭りの時期には、さらにかご細工一色になるそうです。 町中に編み細工のインスタレーションなどが設置されたり、作り手が実演をしていたりと、楽しい数日になるとのことで、私たちもぜひ訪れたいと思っています。 そのようなお祭り開催の中心人物であり、今回、丁寧に私にも説明をしてくださったマンフレッドさんです。 かごへの情熱を精いっぱい話してくださる彼と、たくさんの話をじっくりとすることができました。 リヒテンフェルスのお祭りの歴史は長く、400年とも500年とも言われていること ドイツでは施設で3年間、やなぎのかご作りが勉強できるが、卒業後それを職業にできている人はほとんどいないこと 施設では、卒業後の仕事として必要な経営的な内容のカリキュラムはないこと その3年間は税金を使った事業でもあるので、せっかく身につけた技術なのに仕事として続かないことは、実にもったいないと感じていること 残念ながら、現在ドイツでは、かごを作っても買い取ってくれるようなお店がなくなってしまったこと。 卒業生の販路は、いろいろな場所で開催されるクラフトマーケットやSNSやHPでの販売がほとんどということ。 私はそれを聞いて、実に複雑な思いになりました。販売という点において、日本と同じような状況、またはもっと厳しい状況でもあると思ったからです。 作り手の方にとって、どんなに技術があっても、かごをうまく作れたとしても、売り先がない、または売り先が安定していない状況だということです。コロナのような疫病で、数年間クラフトマーケットが開催されないというようなことも起こりうるということです。 私たち自身は、今の時代、一方で作り手の方が単独でSNSやHPを駆使して販売もできるわけですが、もう一方で、作り手と売り手が協力して、お客様に販売することも、理にかなっていると思っています。残念ながら、ドイツにはその「売り手」を担う人が誰もいなくなってしまったという現状のようです。 私たちも他人事ではありません。かく言う私たちのお店も元々は先代で閉める予定だったお店でしたので、もしかしたら、同じ状況になっていたかもしれません。 マンフレッドさんたちは、その状況に危機感を持っていて、そのようなかご細工を販売できるお店を計画されているとのこと。 また、同時にそのような状況から、現在私たちのように、かごを専門として国内外のかごの作り手の方と関係を作って、お客様に販売しているお店は貴重だとおっしゃいました。...
世界かご編み大会2023 in ポーランド 5 -ドイツの展示-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 4 -スウェーデンの展示-
屋内会場は、大きく2つのエリアに分かれていました。 1つは、コンテストの参加者が実演をするエリア。もう一つは、展示と販売ができるブースが並ぶエリアです。 各国の展示の様子をご紹介します。まずはスウェーデンの展示です。 かごは世界において、最も古くから作られている手工芸だということを説明しています。また、残念ながら現在は引き継がれることなく、その技術を失ってしまっているということも。 いくつかの理由としては、土の中で分解される材料でできていることと、人々にとって、ごく普通で実用的なものだったため、使い終わったら燃やされていたことが挙げられるとのことです。 こちらはジュニパーという素材で作られたかごです。ジュニパーはセイヨウネズとも呼ばれるヒノキ科ビャクシン属の木で、その果実はお酒のジンの香りの大事な要素になります。 同じくジュニパーで作られた両手つきのかごです。荒っぽくかっこよい作りで庭仕事、魚釣り、鉄道で使う石炭を入れたりするのに使われていたそうです。 こちらは日本語でバッコヤナギで作られたかごです。スウェーデン中部で作られていたようです。日本ですと、岩手県の面岸(おもぎし)地区で作られる「面岸箕(おもぎしみ)」は、サルナシとバッコヤナギを使って編まれています。寒い地域エリア同士の素材の共通点です。残念ながら、現在お作りになれるかたはいらっしゃらないとのこと。 スウェーデン南部では他のヨーロッパ諸国と同じように、やなぎを材料にしてかごを編んでいたようです。 ヘーゼルナッツが取れるヘーゼルの木を使ったかごもありました。ヘーゼルを使ったかごはポーランドにも見られます。 ほかにも近隣のエストニアなどで見られる、パインや白樺で作られたかごも。 展示をしてくれたスウェーデン人の方とたくさん話をすること、および情報交換をすることができました。 たとえば、 スウェーデンは(日本とおなじように)南北に長い国で、地域によって気候が違うため、いくつかの異なる材が使われていること 以前は、つかう目的別に実にたくさんのかごの種類があったこと もとは、かご作りは低所得層の仕事としてのイメージが強かった。刑務所で教えられる仕事のひとつでもあった。 19世紀から20世紀初頭にかけて、小規模農業者や高齢者、障害者にとっての大事な現金収入源となっていた。 いくつかの地域や村では、全員が従事するほど盛んになり、国外輸出もしていた。 そのような産業として認知されたことで、かごを作る人の社会的地位があがり、国内での手仕事保護運動の気運も高まり、クラフトショップなどでかごが販売されるようになってきた。 日本のかごやざる、箕の文化が辿ってきた歴史と、地理的にはそこから遠く離れているスウェーデンでも、系譜としてはそう遠くないということが再確認できました。 スウェーデンのかごをみなさまにご紹介できるよう、こちらの方々とも連絡を取り合っていきたいと思います。 イチカワトモタケ +++++++++++++++++++ つづく
世界かご編み大会2023 in ポーランド 4 -スウェーデンの展示-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 3 -ポズナンの街並み-
大会期間中、毎日朝から夕方まで大会に参加し、夜は他国の人々との交流食事会にも参加していましたので、ほとんど観光をする時間がなかったのですが、今回のコラムでは少しでもポーランドのポズナン市の雰囲気を楽しんでいただければと思います。 こちらはドミトリー5階の部屋から。早朝の景色。 主催者が用意してくれたドミトリーから、会場へ通うまでの道のりや、ドミトリーから徒歩圏内の景色ではありますが、日本とは違う景色に、十分私たちは楽しませてもらうことができました。 ドミトリーの入り口です。ポーランド語しか話せない受付の方との四苦八苦したコミュニケーションは忘れられません。 ポズナンは中世ポーランドの首都でしたが、現在は旧市街郊外には大学が数多くあり、学生の街となっています。その学生寮の一部を、今大会参加者は利用させてもらいました。 数百万人の隣国ウクライナ難民を受け入れたと言われるポーランド。学生寮の中にはウクライナとポーランドの国旗を並べる部屋も。 緑と黄色を基調としたバスがよく走っており、市民の足になっている印象でした。 真っ赤なKIOSK。 スーパーマーケットも整然とした雰囲気です。 無人レジも設置されており、私たち外国人でもスムーズにお買い物ができました。 農業・酪農国でもあり、野菜はどれも大きく、おいしそうでした。乳製品の種類もとても多く、チーズ用の冷蔵庫が何台も並ぶほど。肉売り場も本格的で、ウインナーやソーセージは、とても充実しています。 そして、今回一番私たちの足として活躍してくれたのはこちらのトラムです。日本で言う路面電車です。バスと同じ緑と黄色の鮮やかな配色です。 2両の車両が連結されています。ほどよい乗車人数なので、乗り降りにもストレスがありません。揺れも少なく快適です。 目的地は違うものの、3-4分に1本と頻繁に到着します。 各駅には券売機が設置されています。 左はトラムの一般チケット料金、右は学割やその他割引き料金だそうです。現地通貨ポーランドズウォティはPLNと表記します。PLN4.00=140円程度、PLN80.00=2,700円程度です。面白いのが、実際に車両に乗る時間でチケットを買うことです。15分、45分、90分というように。それだけポズナン市の規模が大きすぎず、トラムの発着時間が安定しているのかもしれません。私たちは毎日乗るので、7-DAYSチケットを購入しました。 トラム車内です。買ったチケットを中の機械で有効化(改札)します。ただ、特に、車掌さんがいるわけでもなく、誰にもチェックされません。日本でも感じることがありますが、人の良心に委ねられたシステムだと感じます。 街の中心である旧市街の方へ行くと、トラムを動かすための電線がたくさん張り巡らされています。 車窓からちらりと見える景色が、実に美しかったです。 期間中、毎日トラムに乗って、寮がある駅から会場のほうへ、移動します。この移動時間もさほど苦にならなかったです。 会場の近くのこちらはポズナン駅です。大きなターミナルです。 電動キックボードも街中を走っています。 バスやトラム、車が並走するような中心地に今大会の会場がありました。 大きな大きなイベント会場の一角を使って今大会は行われました。 寮に戻る際に、私たちの寮の最寄駅にもポスターが貼られているのを目にして、外国にいながらホームを感じるような嬉しい気持ちになりました。 主催者の皆さんのご努力には本当に頭が下がります。 ポズナン在住のポーランド人女性の方と、英語でお話をする機会がありましたが、この街は、出かけることに不安はないとおっしゃるほど治安が安定しているそうです。 実際に私たちも滞在中、危険を感じるような瞬間が全くありませんでした。海外においてそれはとてもありがたいことです。 おかげで滞在期間中は不必要に用心をすることがなく、佐々木さんと無事に、安全に、問題なく過ごすことができました。 イチカワトモタケ...
世界かご編み大会2023 in ポーランド 3 -ポズナンの街並み-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 2 -かごに集う人々-
4年に一度、同じ場所でかごを編むためにポーランドに集う人々。 そこでは、同じ言語を話す必要性を感じないほど、お互いに立ち振る舞いで敬意を表し、お互いの道具を見つめ、その材料について興味を持ち、目で、そして身振りで語り合っています。 かごを編まない私からすると、実に羨ましい瞬間です。 作り手同士は、必ずと言っていいほど、「触ってもいいですか」と断りを入れます。相手の作ったものを尊重している証と感じます。そして、それがコミュニケーションのスタートでもあります。 コンテスト開始前の和やかなひと時が終わると、出場者はそれぞれ自分の材料を手にし、真剣な表情でかご作りに向き合っていきました。 さわぐるみの樹皮を水につけて、状態を確認する佐々木さん。 ヨーロッパでよく使われる材料「やなぎ」は、前日の夜から漬けていた方も多かったです。それだけ元々は乾いた状態だと編むのには硬い素材であり、完成した後もかっちりと丈夫なかごになるということです。 手前の日本人女性はドイツで柳のかご編みを3年間勉強された樋口恵さんです。ドイツのチーム経由で、日本人として出場されました。 佐々木さんも底編みからスタートです。テーブルが想像以上に滑って、編みにくいとのことでした。このような不利な条件で編むことも、海外の大会ならではです。 2日間という短い日程で、材料づくりを一本一本、手で挽きながら始める参加者や、 大型の機械を入れて材料を作る人、 目を見張るような大きな木型を使ったり、 いくつかの木型を組み合わせて、かごの外枠を作ったりと、さまざまなアプローチでかご作りを始めます。 やなぎを材料としてかごを編む方が多かったです。 金属の型に編み込む方も多いです。 モロッコの方はエスパルトというコシのある草、 ニュージーランドの原住民マオリのかごを応用しているかたは、フラックスと呼ばれる草を材として使っていました。 ウクライナチームは麦わらを材料にしています。 台湾チームは、日本と同じような竹を使います。 自然素材以外の競技部門もあり、カラフルなかごを編む人も。こちらはエストニアからの参加者。 今回のコンテスト実演会場は、有料ではありますが、一般公開されているため、お客様が自由に出入りしながら、その作り手のみなさんのかご作りを、じっくり見ることができます。会場を訪れたお客様はかご作りに興味津々で、気軽にお話をしてこられるため、お客さんと話していると、あっという間に時間が過ぎてしまうとのこと。 幼稚園のご一行も。 コンテスト時間内でありながら、随時質問もされるという作り手の方からすると、バランスや時間配分を考えなくてはいけない大会です。 そして、大会の途中には、「JURY」というたすきをかけた、審査員も巡回してきます。質疑応答もありながら、のちの審査のために審査員も記録をしていきます。 審査員も、出場者と同じようにかご編みをする人たちです。その真剣な眼差しから、作り手同士の敬意が伝わってきます。 真剣にかごを作る人たちの背中は、どこか似ていて、いつまでも見ていられる光景です。 イチカワトモタケ +++++++++++++++++++ つづく
世界かご編み大会2023 in ポーランド 2 -かごに集う人々-

世界かご編み大会2023 in ポーランド 1 -かごに呼ばれて-
こんにちは。やっと少し暑さが和らいできたこの頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。 この8月にポーランドのポズナン市で開催された「第5回世界かご編み大会( 5th World Wicker & Weaving Festival 2023)」に参加してまいりました。2019年以来、4年ぶりの開催となります。この間に起きた疫病やいまだ落ち着かない情勢から見ますと、4年ごとに開催されるこの大会が通常通り開催され、参加できたことは感慨深いものがありました。 ありがたいことに主催者からはぜひ、今回も参加してほしいとの連絡が何度も来ていました。ただ、今回は正直なところ、そのような状況や情勢を踏まえ、参加することに私自身、大きな迷いがありました。 そんな中、昨年、弊店で企画展を一緒にしてくださった、岩手でさわぐるみを使ったかごを作られる佐々木敏夫さんにこの大会のお声がけをしてみました。すると、佐々木さんから「ぜひ、行ってみたい!」という言葉をいただき、そのおかげで、迷いが吹っ切れて、2015年、2019年に続いて、3回目の参加を果たすことができました。 こちらのコラムでは、日本から参加した私たちの目線でこの大会をレポートしていきたいと思います。少しずつの更新になりますが、ご興味ある方はぜひ一緒にお楽しみいただけたら幸いです。 ポーランドで行われる世界かご編み大会は、実演コンテスト形式です。2日間という日程で、全参加者が会場に集まり、そこで1つのかごを材料の状態から編み上げて、それを出品します。審査員によって、それが各部門ごとに評価され、最終的には部門を越えて1人の総合グランプリを決めるという形式です。全員がお互いの技術や素材を楽しみ、交流しながらもどこか緊張感のある空気感で包まれる、稀有な大会です。 このような世界情勢にも関わらず、今回も60カ国近い国々が参加したようです。2日間で編みきれないような作品や、ポーランド渡航が叶わない人たち向けには、事前に製作してポーランドへ送り、審査を依頼する「送付作品」部門もあります。 私たちにとっては、その世界中から集まるかご細工を一堂に見られる貴重な機会であるとともに、何より世界でかご作りに携わる人たちとの出会い、そして再会することも大きな目的です。 会場の至る所で編み細工を見ることができます。また、参加者も至るところで、編み細工を取り入れています。 開祭式の様子です。帽子をかぶっているのが主催者のパヴラク氏です。 屋内及び、野外会場には、ヨーロッパでよく使われる素材「やなぎ」を使ったモニュメントも。 太い柳で編まれた大型のハンモックのような、ブランコのような造形。 このような会場に、たくさんのかごにまつわる人々が呼ばれて、集まって、かごを編む。どこまでも編み細工、そしてどこまでも、かご、カゴ、籠です。 イチカワトモタケ +++++++++++++++++++ つづく
世界かご編み大会2023 in ポーランド 1 -かごに呼ばれて-

-予約販売-- 動物たちの集い 【Nagano -3-】
前回のコラム(輪のかたち【Nagano-2-】)につづき、しめかざり2022のラインナップをご紹介します。 今回は、「動物を象(かたど)ったもの」がテーマです。 *それぞれの商品名をクリックしていただきますと、各商品ページへ移行することができます。 19. 寿酉 - ことぶきどり - 今年から新たに仲間入りした、新作の「寿酉」です。 夜明けが近づくと鳴きはじめる鶏。その高らかな声は、夜の闇を払い、太陽を招き入れるかのよう。 日の光で天候よく、暖かく。そして実りの多い一年を願うしめかざりです。 20. 寿鶴 - じゅかく - こちらも新作の、鶴を模したしめかざりです。 稲穂をたずさえ天に向かって飛び立つような姿が印象的です。 鶴は長寿を象徴する生き物としてよく知られていますが、一方で、鶴がくわえてきた稲穂から稲作の文化がはじまったとする伝承もあり、穀物の神としての側面もあるそうです。 21. 飛鳥 - あすか - こちらも今年から新しくご紹介する、「飛鳥」です。 ごぼうじめを輪にしたリースに、藁の束(サゲ)、稲穂、そして鶴の水引がついた華やかな掛けかざりです。 整った縄綯い(なわない)と色鮮やかな水引は、そのまま飾っても十分に華があります。 22. 雄飛 -...